障がいを持つ方の生活をサポートするために社会的な支援は欠かせません。
その中で重要な役割を果たしているのが「障がい者支援施設」です。
しかし、障がい者支援施設といっても、どのような支援が受けられるのか?対象者や費用などわからない点が多いですよね。
この記事では、障がい者支援施設の目的や対象者、障がい福祉サービスの種類、費用、入所の流れをお伝えします。
障がい者本人やご家族にとって必要な支援が受けられるか場所かを判断してみてください。
目次
障がい者支援施設とは?
障がい者支援施設とは、障がいを持つ方が日常生活を送るための支援を提供する施設です。
家庭で支援が難しい場合や、専門的なサポートが必要な場合に利用されます。
主な利用者は、重度の障がいを持つ方や自立した生活のために特定の訓練を必要としている方です。
具体的には、次のサービスが提供されます。
- 日常生活支援:食事、入浴、排泄などの基本的な生活支援
- 医療ケア:必要に応じた医療サービスの提供
- リハビリテーション:身体機能の維持・向上を目指したリハビリプログラム
- 就労支援:就労に向けた訓練や職場探しのサポート
- 社会参加支援:地域社会への参加を促進する活動やプログラム
これらのサービスを通じて、障がい者が充実した生活を送れるよう、専門的な支援が提供されるのが障がい者支援施設です。
入所理由の約7割が「家庭での支援が困難」
主な入所理由別の新規入所者数人数割合について、全体では「家庭での支援が困難であるため」が68.1%となっている。
引用:厚生労働省
この厚生労働省の調査結果は、家庭での介護や支援が難しいことを示しています。
家庭での介護が困難な理由は、障がいの程度によっては専門的なケアが必要になることや、介護に多くの時間や労力を必要になるなど様々です。
このような背景から、障がい者支援施設は家庭での支援が難しい障がい者を受け入れて、専門的なケアと支援を提供する重要な役割を果たしています。
障がい福祉サービスの種類一覧
障がい者支援施設を詳しく解説する前に、障がい福祉サービスの種類をみておきましょう。
障がい福祉サービスの一覧は次の表のとおりです。
サービス種類 | 説明 |
---|---|
訪問系 | 家に住んだまま介護を受けられる |
日中活動系 | 施設へ通い目的に応じた活動を行う |
施設系 | 日常生活の介護を受けられる |
居住系 | 障がいのある方が支援を受けながら共同生活を送る |
訓練系・就労系 | 就労に向けた支援を中長期で行う |
利用者は自身の障がいの種類や程度、生活環境、目標に合わせて最適なサービスを選ぶことができます。
訪問系:家に住んだまま介護を受けられる
訪問系サービスは、障がい者が住み慣れた自宅で、生活に必要な支援を受けられます。
具体的には次のとおりです。
- ホームヘルプサービス(訪問介護)
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 訪問入浴介護
- 訪問生活支援
日中活動系:施設へ通い目的に応じた活動を行う
日中活動系サービスは、障がいのある方が日中に施設に通い、一人ひとりの状況や目的に応じた活動を行います。
たとえば、リハビリテーションや社会参加を促す活動、スキルアップのための訓練などです。
施設系:日常生活の介護を受けられる
施設系サービスは、障がいのある方が日常生活の全般にわたる介護を受けられます。
今回解説する障がい者支援施設が該当します。
受けられるサービスは、食事の提供、入浴の介助、排泄支援、医療ケア、リハビリテーションなどです。
居住系:障がいのある方が支援を受けながら共同生活を送る
居住系サービスは、障がいのある方が支援を受けながら共同生活を送るための施設です。
利用者が個別のサポートを受けながら、他の利用者と一緒に生活することで、社会的なつながりや自立を促進します。
スタッフが常駐しており、食事の準備や掃除、日常生活のサポートをしてくれるため、安心して生活を続けられます。
訓練系・就労系:就労に向けた支援を中長期で行う
訓練系・就労系は、障がいを持つ方が働くためのスキルを習得するための中長期で支援してくれます。
具体的には次のとおりです。
- 就労移行支援:一定期間内に就労に必要な知識やスキルを習得する訓練を提供
- 就労継続支援A型:雇用契約を結ぶ。給与を受け取りながら働く場を提供
- 就労継続支援B型:雇用契約を結ばない。働く時間やペースを柔軟に設定できる
自分の能力や希望に応じた支援を受けることで、就労への自信を高めて社会参加の機会を広げられます。
障がい者支援施設と他施設との違い
障がい者支援施設と障がい者グループホームの違い
障がい者支援施設と障がい者グループホームとの違いは次の表のとおりです。
項目 | 障がい者支援施設 | 障がい者グループホーム |
---|---|---|
目的 | 日常生活全般の介護や医療ケアを提供 | 共同生活を送りながら、 必要な支援を受けることで自立を促進 |
サービス | 24時間体制での介護、医療サポート リハビリテーションなど |
日常生活のサポート(食事、掃除など)、 社会参加の支援 |
対象者 | 重度の障がいや医療的ケアが必要な方 | 比較的軽度の障がいを持つ方で、 一定の自立が可能な方 |
自立した生活を目指す障がい者グループホームについて詳しく知りたい方は、次の記事も参考にしてください。
障がい者支援施設と老人ホームの違い
障がい者支援施設と老人ホームの違いは次の表のとおりです。
項目 | 障がい者支援施設 | 老人ホーム |
---|---|---|
目的 | 日常生活全般の介護や医療ケアを提供 | 高齢者が安全で快適に生活できる環境を提供 |
サービス | 24時間体制での介護、医療サポート リハビリテーションなど |
日常生活の介護、健康管理 レクリエーション、認知症ケアなど |
対象者 | 重度の障がいや医療的ケアが必要な方 | 主に65歳以上の高齢者 介護が必要な高齢者や自立した生活が困難な方 |
障がい者支援施設の対象者
障がい者支援施設に入所できる対象者を解説します。
障がい者程度区分4以上、50歳以上であれば区分3以上
障がい者支援施設の利用には、障がい者程度区分4以上の常時支援が必要な方が対象です。
具体的には、移動や食事、入浴、排泄などの多くの場面で介助が必要な方が該当します。
年齢が50歳以上であれば、程度区分が3以上の方も利用できます。
これは、年齢とともに障がいの影響が大きくなることを考慮した基準です。
区分3は、ある程度の自立した生活が可能であるものの、定期的な支援や介助が必要な状態を指します。
65歳以上でも条件を満たせば利用できる場合もある
一般的には65歳以上になると障がい者福祉サービスから介護保険サービスに移行します。
ただし、いくつかの例外や特別な条件により、65歳以上でも障がい者支援施設を利用できる場合があります。
障がい者手帳を所持している場合
障がい者手帳を所持している高齢者は、引き続き障がい者福祉サービスを利用できる場合があります。
特例措置を受ける場合
特定の障がい状況や福祉サービスの必要性が認められた場合、特例措置として障がい者支援施設の利用が許可されることがあります。
地域の福祉政策がある場合
地域によっては、障がい者福祉サービスと介護保険サービスが連携し、個別のニーズに応じた柔軟な対応が行われる場合もあります。
障がい者支援施設の入所の流れ
障がい者支援施設に入所するためには、次の流れが一般的です。
①市区町村への相談
市区町村の役所(福祉課)で相談を行います。
ここで、障がい者支援施設の利用についての情報を得ることができます
・相談内容
施設入所を希望していること、ご自身の障がいの種類や程度、介護が必要な状況、必要書類や手続きなど
②障がい福祉サービス受給者証の申請
障がい支援区分を取得し、障がい福祉サービス受給者証を発行してもらいます。
障がい支援区分は1から6まであり、施設入所支援を利用するためには、区分4以上(50歳以上は区分3以上)が必要です。
・必要書類
障がい者手帳、収入証明書など
・審査内容
申請内容に基づいて、障がいの程度や介護の必要性などを審査
③施設の選定と見学
利用したい障がい者視線施設を選んで体験利用を行います。
体験利用を通じて、施設の環境やサービスを確認することができます。
・施設の選び方:
立地、規模、提供されるサービス内容など、希望に合った施設を選ぶ
・見学する際のポイント
施設の雰囲気、スタッフとの相性、利用者の様子など
④契約と入所手続き
体験利用後、施設と契約を結び正式に入居します。
・契約内容
入所期間、費用、サービス内容など
・入所日
施設の空き状況に合わせて入所日が決定
障がい者支援施設にかかる費用
障がい者支援施設の利用にかかる費用は、ほとんどの場合は格安です。
個人の状況や施設によって異なりますが、国や自治体から補助金を受けられる場合もあります。
非課税世帯か生活保護なら無料
市町村民税の非課税世帯の方や生活保護を受給している方は、障がい者支援施設の利用料が原則無料となります。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
一般1 |
市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) |
9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
参考:厚生労働省
食費・水道光熱費は国から補助金がでる
食費や水道光熱費は、利用者の負担を軽減するため国から補助金が支給されます。
ア 20歳以上の入所者の場合
入所施設の食費・光熱水費の実費負担については、54,000円を限度として施設ごとに額が設定されることになりますが、低所得者に対する給付については、費用の基準額を54,000円として設定し、食費・光熱水費の実費負担をしても、少なくとも手元に25,000円が残るように補足給付が行われます。引用:厚生労働省
これは「補足給付」と呼ばれ利用者の所得に応じて支給額が決定します。
低所得者ほど多くの補助を受けられるよう設計されており、経済的な負担を軽減する重要な役割を果たしています。
生活用品や雑費は実費で賄う
日用品や衣類、娯楽費などの個人的な支出については、利用者本人が実費で負担します。
具体的には次のとおりです。
- シャンプーやせっけん
- おむつ
- おやつ
- 服代
- 散髪代
- 趣味代
これらの費用は個人の生活スタイルや好みによって大きく異なるため、施設の基本料金には含まれていません。
医療費は無料~数千円程度
医療は無料または低額で受けられることがほとんどです。
具体的には、自立支援医療(更生医療・育成医療・精神通院医療)や重度障がい者医療費助成制度などが適用され、月額の自己負担上限額が設定されています。
障がい者支援施設での一日の生活
障がい者支援施設での一日の生活の過ごし方は次の通りです。
時間 | 日課 |
---|---|
7:00 | ベッドから起きて着替え、身支度を整える |
8:00 | 朝食を食べて歯磨きをする |
10:00 | リハビリテーションや日中の活動(スポーツや買い物など) |
12:00 | 昼食を食べて歯磨きをする |
13:00 | 集団レクリエーション、入浴、個別機能訓練など |
15:00 | 間食や水分補給 |
17:30 | 夕食を食べて歯磨きをする |
19:00 | テレビを見る |
21:00 | 寝巻に着替え就寝の準備をする |
22:00 | 就寝 |
目的に合わせた障がい福祉サービスを選ぼう
障がい者支援施設は、国や自治体から補助金を受けられるため、経済的な負担が少ないです。
普段の生活に必要なサービスを受けられるため、安心して生活を送れます。
障がい者支援施設以外にも、障がい福祉サービスは複数あります。
障がいの程度や状況に合わせて、必要な障がい福祉サービスを選んでみてください。