親の死後、障がいを抱えるきょうだいを、誰がどのように支援していけば良いか不安に思う方は多いです。
※きょうだい児とは、障がいのある兄弟姉妹を持つ子どものこと。
親の死後、公的支援制度を利用すれば色々な選択肢があります。
障がいを抱えるきょうだいを、きょうだい児がケアすることも、公的な外部サポートにケアをお願いすることも可能です。
今回の記事では、きょうだい児の扶養義務と親の死後に発生する問題、利用できる公的な支援制度を解説します。
目次
きょうだい児に扶養義務はあるが自分の生活が優先される
民法上は親が亡くなった後、きょうだい児に障がい者の扶養義務が発生しますが、現状の生活を考慮されることが多いです。
(扶養義務者)
第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。(扶養の程度又は方法)
第八百七十九条 扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。引用:e-Gov
つまり、きょうだい児が結婚していて、自分の家庭がある場合などはご自身の生活が優先されます。
障がい者の生活をサポートしてくれる公的支援制度
障がい者の生活をサポートしてくれる公的支援制度を次の3つの項目に分けて解説します
- 住居の提供
- 財産管理のサポート
- 生活のサポート
ちなみに、公的支援制度は利用までに手続きや審査があるためすぐに利用できません。
制度によって異なりますが数週間から数か月かかることもあります。
住居関連のサポート
障がい者が安心して生活できる環境を整えるには、住居の確保が必要です。
①障がい者グループホーム
障がい者グループホームは、障がいを持つ方が共同生活を送る住宅です。
生活において自立を目指しながらも、日常的なサポートが必要な人が主に対象となります。
障がい者グループホームの詳しい解説は次の記事で行なっていますので、併せてお読みください。
②障がい者支援施設
障がい者支援施設は、障がいを持つ方が日常生活を送る上で必要な支援を受けながら生活できる施設です。
日常生活の自立が難しい場合や家族でのサポートが難しい場合に利用されます。
障がい者支援施設の詳しい解説は次の記事で行なっていますので、併せてお読みください。
③居宅介護(ホームヘルプサービス)
居宅介護は、利用者の自宅にヘルパーが訪問し日常生活を支援する制度です。
住み慣れた自宅で自立した生活が可能になるため、安心して日常生活を送れます。
自宅で自立した生活を目指したい場合は居宅介護を検討すると良いでしょう。
④福祉型住宅(支援付き住宅)
福祉型住宅は、障がい者や高齢者が自立した生活を送れるように必要な支援が提供される住宅です。
一般的な住宅とは異なり、日常生活でのサポートが必要な場合に、訪問介護や生活支援を受けられます。
⑤特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホームは、主に65歳以上の高齢者や重度の要介護者を対象とした福祉施設です。
障がいを持つ方や介護が必要な高齢者に対して、生活全般にわたる介護サービスを提供しています。
知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られ、在宅生活が困難な状態であるか否か。
障がいがあって、在宅生活が困難な状態の場合は、入居が認められる場合があります。
医療スタッフによる健康チェックやリハビリを受けられるため、長期的な生活支援が必要な場合に有効です。
ただし、特別養護老人ホームによっては入居までの待機期間が長いこともあります。
財産管理のサポート
障がい者の財産や金銭管理をサポートしてくれる公的支援制度もあります。
①成年後見人制度
成年後見人制度は、知的障がいや認知症などにより判断能力が低下した人の財産管理や契約行為を支援する制度です。
家庭裁判所が成年後見人を選任し、日常生活における重要な手続きや財産管理を代行してくれます。
ただし、毎月費用がかかることや、原則として障がい者本人が亡くなるまで外せないなどのデメリットもあります。
慎重に検討してから利用するようにしてください。
成年後見人制度の詳しい解説は次の記事で行なっていますので、併せてお読みください。
②家族信託
家族信託は、障がい者本人の代わりに親や兄弟、信頼できる知人が財産管理を行います。
財産管理の方法を詳細に決められるため、成年後見人制度より柔軟な対応が可能です。
ただし、家族信託の対象範囲はあくまで財産管理です。
それ以外の住居や介護サービスの契約手続きなどは対象になりませんので覚えておきましょう。
③日常生活自立支援事業
知的・精神障がいなどで自分で判断が難しい方に、日常のお金の管理や福祉サービスの利用をサポートする制度です。
事前に社会福祉協議会と契約することで利用できます。
利用料金の目安は1,000~2,000円/回(※生活保護世帯は無料)
生活資金のサポート
障がい者の生活資金に関連する公的支援制度をご紹介します。
①障がい者年金
障がい者年金は、障がいによって生活や仕事が制約される方がもらえる年金制度です。
国民年金の加入者が対象の障がい基礎年金と、厚生年金の加入者が対象の障がい厚生年金の2種類があります。
【障がい基礎年金】
障がい基礎年金 | |
---|---|
1級 | 年1,020,000円 ※月額換算85,000円 |
2級 | 年816,000円 ※月額換算68,000円 |
上記の金額の他に、障がい者本人に子供がいる場合は次の”子の加算額”が加わります。
子の加算額 |
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2人まで | 1人につき年234,800円 ※月額換算約19,566円 |
3人目以降 | 1人につき年78,300円 ※月額換算6,525円 |
※生計を維持されている子供がいるときに加算されます。
※18歳になった後の最初の3月31日までの子供、または20歳未満で障がい等級1級または2級の子供が対象です。
※障がい基礎年金は”配偶者の加給年金額”はありません。
【障がい厚生年金】
障がい厚生年金 | |
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1級 | (報酬比例の年金額× 1.25) + 配偶者の加給年金額 年234,800円 |
2級 | 報酬比例の年金額 + 配偶者の加給年金額 年234,800円 |
3級 | (報酬比例の年金額) |
※配偶者の加給年金額は、生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに加算されます。
※報酬比例の計算は日本年金機構の報酬比例部分を参考にしてください。
※障がい厚生年金は”子の加算額”はありません。
②生活保護
生活保護は、世帯全体の収入が”最低生活費”を下回っている方を対象に支給されます。
最低生活費とは、生活費や住宅費、教育費、介護費などの生活に費用を足したもの。最低生活費は年齢や地域によって異ります。
たとえば、兵庫県宝塚市で次の家族構成だとしましょう。
- 健常者の80代の親ひとり
- 発達障がい(精神障がい2級)の50代の子供ひとり
この場合は最低生活費の目安は月183,810円安です。※あくまで概算です
世帯収入が100,000円あった場合、差額の83,810円(最低生活費183,810‐収入100,000)が生活保護費の対象となります。
③特別障がい者手当
特別障がい者手当は、精神または身体に著しく重度の障がいがある20歳以上の方が対象です。
ただし、障がい者本人やその配偶者、扶養義務者(父母など)の前年の所得が一定額以上あるときは支給されません。
きょうだい児の負担を減らすためにできること
障がいを持つきょうだいを支援することは、精神的・時間的な負担が大きくなることがあります。
しかし、すべてを一人で抱え込む必要はありません。
家族や地域と連携することで負担を軽減できます。
一人で抱え込まず周りの人に相談する
責任を感じてすべてを背負おうとすると、精神的に追い詰められたり疲労が蓄積したりと負担が大きくなります。
仮に、直接的な協力を得られない場合でも、話を聞いてもらうだけで孤立感や不安感が軽減されるかもしれません。
ひとりで抱えずに、周りに相談したり協力を求めてみてください。
家族全体にとって最適なバランスを考える
大切なのは、障がいを持つきょうだいときょうだい児にとって最適なバランスを見つけることです。
その手段の1つとして、グループホームや障がい者施設への入所があります。
地域の相談窓口や専門家へ相談する
地域の障がい者支援センターや福祉事務所に相談することで適切なサポート方法が見つかりやすいです。
たとえば、弊社のある兵庫県宝塚市の場合ですと次の窓口があります。
相談窓口 | 連絡先 |
---|---|
宝塚市 社会福祉協議会 | 0797-86-5000 |
宝塚市役所 基幹相談支援センター | 0797-77-2287 |
地域によっては、きょうだい児向けの相談会や支援団体があります。
同じ立場の人たちと悩みを共有しあうことで精神的な負担を軽くできるかもしれません。