「親が亡くなった後に障がいを持つ子供が安心して暮らすにはどうしたらよいのだろう……」
「経済的に困窮せずに社会的なサポートを受けて生活できるだろうか……」
これらは障がいがある子供を持つ親が常に抱える悩みで「親なき後問題」と呼ばれています。
今回は、親なき後問題で現実的に起きる問題と、具体的な対策方法を解説します。
親なき後問題とは
親なき後問題とは、親が亡くなった後に障がい者の子供の面倒を見てくれる人がいなくなることです。
親が障がいを持つ子供の面倒を見れなくなったときに、普段の生活のサポートを誰が行うのか?といった問題が発生します。
そのときのことを、家族で話し合い対策を考えておくのがベストですが、現実的に話し合いの機会を作れない方も多いでしょう。
結果として、障がい者本人の自立した生活が遠のいてしまい、親が亡くなったときに色んな問題が表面化します。
親なき後に子どもが直面する課題
親がなくなったときに子供が直面するであろう課題を紹介します。
食事や入浴、排泄などの日常生活が困難になる
障がいによっては、日常生活を自力で行えなくなります。
親が毎日の食事や入浴、排泄などのケアを行っていた場合は、親がいなくなった時点で子供の生活が立ち行かなるでしょう。
生活資金や財産の管理が難しい
知的障がいをもつ方は、自分で金銭管理を行うことが難しくなるでしょう。
また、親が子供名義で銀行口座を作っていたのであれば注意が必要です。
子供が成人した場合、口座への入出金は名義人の子供にしかできません。
親が亡くなったあと、知的障がいがある子供の場合は自分で引き出せなくなる可能性も考えられます。
賃貸物件の契約が難しくなる可能性がある
もし、いま賃貸物件に住んでいるなら契約更新が難しくなるかもしれません。
たとえば、親が契約している賃貸物件に障がいを持つ子供と同居している場合、親が亡くなった後に子供が賃貸契約の更新を行うのは難しくなります。
また、持ち家の場合でも不動産管理の手続きなどでトラブルは起きやすいです。
悪徳業者の標的になるケースも
知的障がいなど自分で判断する能力が低い場合、悪徳業者の標的にされるケースがあります。
実際に、不必要なリフォーム工事を契約させられたり、利用した覚えのない請求金額を支払わされたりする事例があるため注意しなければなりません。
障がいの特性から、被害にあったことを人に言えなかったり、そもそも被害にあったことに気が付かない可能性もあります。
親が亡くなった時の事務手続きに対応できない
親が亡くなったときの葬儀の手配や遺産相続等の手続きは、障がいを持つ方には対応できない場合もあるでしょう。
そのときのために、信頼できる親族や代理業者に代行してもらう「死後事務委任契約」があります。
死後事務委任契約を使うことで、親である自分が亡くなった後の葬儀や納骨、埋葬に関する事務手続きを代理で行ってくれます。
孤独感や疎外感を感じさせてしまう
親が亡くなることで、子供が社会的に孤立するリスクもあります。
たとえば、今まで親としか関わりがなかった障がい者が、親が亡くなった後に地域社会と関わりながら生活をするのはストレスを感じるでしょう。
誰にも頼れない孤独を感じるでしょうし、親側も「一人にしてしまった」という後悔が残るかもしれません。
負担がきょうだい児に集中する
親の死後に障がい者のきょうだい児に負担が集中する可能性もあります。
※きょうだい児とは、障がいのある兄弟姉妹がいる子どものこと
きょうだい児も自分の生活があるため、親の代わりに全てを負担するのは現実的ではありません。
そうなったときに、誰が生活の面倒をみるのか?
障がいを持つ子の財産管理や住居について、親が元気なうちに話し合っておきましょう。
親なき後問題をどうする?具体的な対策方法
【日常生活の場の確保が最優先】障がい者グループホームで生活基盤を作る
親亡き後問題で最優先すべきは、生活出来る基盤を作ることです。
お金等の問題は専門家が行ってくれますが、日常生活はご本人が行う必要があるからです。
障害がい者グループホームではご本人が1人で出来ることを増やしていく訓練の場所です。
行政から家賃の補助が出るので、1人暮らしよりかなり安くで住めます(弊社の例だと本人負担家賃は月7,500円)が、ただの「シェアハウス」ではありません。
掃除・洗濯・食器洗い・他の利用者との交流など、日常生活の訓練を行っていきます。
実家にいると親がついつい全ての家事全般をしてしまいがちで、親なきあとに基本的な家事等のやり方もわからない状況になりかねません。
親亡き後、日常生活のやり方もわからない状況に陥ると、一番困るのは障がいを持ったご本人です。
- まだ元気だし、元気なうちは面倒をみてあげたい
- なんだかんだ子供が可愛いから、そばにいて欲しい
↑のような理由でグループホームに入れない親がいますが、親亡き後に困るのはあなたではなくご本人です。本当に子供の事が大切ならグループホームを検討してください。
自立した生活に慣れるには時間がかかりますし、グループホームに入居したからといって会えなくなるわけではありません。
ほとんどのグループホームでは施設に会いに行けますし、週末に自宅へ帰宅することも可能です。「先送り」ではなく「今この瞬間」から行動しましょう。
兵庫県宝塚市で障がい者グループホームをお探しの場合、まずは気楽に弊社「犬と暮らす家」にご相談くださいませ。
専門的なサポートが必要な場合は障がい者支援施設を検討してみてください。
親なき後相談室で経済面の相談を行う
市や非営利団体が行っている「親なき後相談室」に相談する方法があります。
税理士や司法書士、行政書士などの相続や資産管理の専門家が在籍しているため、具体的な相談が可能です。
将来にかかる生活資金や財産の管理方法などを、不安に感じている点を相談してみてください。
遺言で障がいを持つ子供に多く相続させる
遺言書を残すことで、障がいを持つ子供に多く財産を相続させる方法があります。
一般的には、遺言書があることで財産分与がスムーズに行われますし、障がいを持つ子供に多く相続することで将来の生活費などの不安は薄まるでしょう。
ただし、子供が複数人いる場合は、財産分与のバランスに不満がありトラブルになる可能性もあります。
「遺留分」という、法律上相続できる最低限の財産をきょうだいから請求されると、障がいのある子に多く残したい、という親の願いが叶わなくなるかもしれません。
「家族信託」できょうだいに財産管理してもらう
家族信託とは、信頼できる家族(通常は子供や親族)に財産を託し、管理や運用を任せる仕組みです。
きょうだいや親族が障がいを持つ子供の代わりに財産管理してくれるため、生活費や医療費などのやりくりの心配がなくなります。
ただし、家族信託の設定には弁護士や司法書士への相談が必要で、設定費用や管理費用が発生することがあります。
また、財産管理や運用の責任が伴うため、適切な知識と能力も求められる点は注意が必要です。
成年後見人制度で支払いや財産管理をサポートしてもらう
成年後見人制度とは、知的障がい者など自分で判断することが難しい方の代わりに、財産管理や各種契約などの法律行為をサポートする制度です。
成年後見人は家庭裁判所が選任し、親族または法律・福祉の専門家などが選ばれます。
一方、次のデメリットもあります。
- 一度決めたら途中で辞める事が出来ない
- 財産が自由に使えない
- 報酬が必要(月2~6万が目安)
社会福祉協議会の「日常生活自立支援事業」を利用する
社会福祉協議会は、知的障がいや精神障がいを持つ方に向けて、日常のお金の管理や福祉サービスの利用をサポートしてくれる「日常生活自立支援事業」を行っています。
ただし、事前に社会福祉協議会と契約しないと利用できないため、親が元気なうちに契約しておく必要があります。
利用料金の目安は1,000~2,000円/回です(※生活保護世帯は無料)
ただし、本人にある程度の判断能力がない場合はサービスの利用ができないこともあります。
一人っ子や身寄りのない場合は特定贈与信託を検討しよう
一人っ子や身寄りのない障がい者の場合は、先に説明した家族信託の利用が難しい場合もあるでしょう。
そのときは、親の財産を信託銀行に信託する「特定贈与信託」を検討してみてください。
信託銀行側(受託者)は財産を預けた親(委託者)が決めた指図書のとおりに財産を管理して、残された子供(受益者)に定期的にお金を交付する仕組みです。
親の死後も信託銀行が安全にお金を管理してくれて、定期的に子供にお金が交付されるため安心です。
受益者である子供が亡くなったら信託期間は終了です。
残った財産は契約内容に基づいて相続人に交付したり、お世話になった施設や団体に寄付したりと親の意思で決定できます。
デメリットとしては、ある程度の資金がないと利用できないことや、使用できる用途に制限がある(生活費、療養費以外にお金を使えない)という点が挙げられます。
その他、基本的に途中で解約ができず、支払う手数料も高い点にも注意が必要です。
親なき後問題は親が元気なうちに早めの対策を!
親なき後問題は対策を後回しにするほど深刻化します。
特に生活資金や財産の管理、住居の問題は親が元気なうちに家族で話し合っておきましょう。
親元での生活が長くなるほど親への依存度が高くなるため、早めに自立した生活に慣れておくことと良いでしょう。
比較的軽度な障がいであれば、障がい者グループホーム等を利用することで、子供の自立心を高めることができ、親の負担も減らすことができます。
お近くの障がい者グループホームを探してみて、気になるところがあれば見学してみてくださいね。